軽量、耐性、堅牢性に優れたはんだボール
航空・宇宙・家電等に使用可能な「スーパーボール」

フランスで生まれた表面処理のエキスパート企業「HEFグループ」が、また一つ新たな製品を開発、世に送り出した。あらゆる電子部品に内蔵されているプリント基板（PCB = printed circuit board）のはんだ付けに使用されるはんだボール。製品名「スーパーボール」の開発に成功したのだ。核となる中心部には軽量な樹脂を採用。プリント基板が熱を帯びても、その収縮の影響を樹脂が最小限にするため安心して使用できる。耐性や堅牢性にも優れ、基板全体の長寿命にもつながって低コスト。自動車の内燃機関等から始まった「滑り」を追求する同社の表面処理技術が、また一つ新たな技術革新の場を築いた。

▶  BGA型パッケージ

 

　衝撃や水分、埃などから半導体素子や集積回路（IC）などを保護し、安定的にプリント基板に据え置くための部材である半導体パッケージ。リードフレームと呼ばれる足状の金属ピンを基板に固定するタイプに代わって、裏面に格子状に配列・接合されたはんだボールを経由して、電気信号のやり取りをするのがBGA（Ball Grid Array）型だ。

　HEFグループでは、このBGAに使われている従来のはんだボールに代わる新しいタイプのはんだボールを開発した。

 

 

▶  従来のはんだボールのデメリット

 

　従来のはんだボールのデメリットとして、スタンドオフの制御が難しいことがある。はんだ付けの際にボールの変形が発生し、スタンドオフを一定に保つことが課題になることがある。

　そして、もう一つ。パッケージの熱膨張率とプリント基板のそれが異なる点が挙げられる。膨張率の違いは、熱による膨張と収縮が繰り返されるうちに基板に歪みを生じさせ、はんだ付けの接点にひび割れや亀裂に相当するクラックを引き起こす可能性をもたらす。クラックが生じれば通電はできなくなり、断線状態が引き起こされる。ひどい時は、部品全体の交換しか対処法はない。

 

 

▶「スーパーボール」の効果

 

　こうした熱起因による膨張と収縮にも対応し、高い信頼性と高品質なパフォーマンスを実現するのが新製品の「スーパーボール」だ。かつては鉛、現在は錫といった金属が素材の主流であり続けたはんだボール。その核の部分に初めて樹脂を採用し、通電のための銅、腐食防止のためのニッケル、そして濡れ性強化と酸化防止のための金といった3層でコーティングしたのが新製品の構造だ。

　樹脂は軽く、一定までの歪みであれば吸収するなどの柔軟性に優れる。それを機能性に富む3層で包んでいるのだが、直径は280～750ミクロンとごく僅か。これにより実現できるのが、制御されたスタンドオフと壊れにくさから来る長寿命だ。

　同社の試算によれば、接合部での亀裂発生は大幅に少なくなり、従来品に比べて寿命は2倍にも増したという。熱サイクルによる信頼性も2～3倍高まることが確認されている。一方で、コスト面では従来品とも遜色ない価格に収めることができた。長年の実績と知見がそれを実現させた。

 

 

▶  拡大するはんだボール市場

 

　HEFグループは、この技術をさまざまな分野に活用したいと考えている。過酷な環境下で電子機器が使用される航空・宇宙、さらには防衛産業。こうした市場で求められる耐性や堅牢性は十分に兼ね備えている。鉛も使っていないことから環境にも優しい。そして、3層の一番外側にある金の層は、用途に応じてさまざまな物質に置き換えることも可能だ。家電市場などへも十分に適用ができる。

　世界のはんだボール市場は、2024年までに3億5000万米ドル（約511億円）、2029年までに4億8461万ドルに達するとの試算がある。位置センサーや加速度センサーなど精密部品・機器の使用が欠かせない現代にあって、さらに拡大が期待される市場だ。同社はここで確固たる地位を築きたいと意気込む。

 

 

▶  従来の表面処理と共に

 

　HEFグループが新たに開発したはんだボールは、HEFがこれまで培ってきた表面処理技術をベースとしている。同社ではこれまでと同様にタイで塩浴軟窒化処理やPVD/DLCコーティングといった表面処理のビジネス拡大のチャンスも狙っている。「ARCOR（アルコア）」や「タフトライド」といった登録商標を持つ同社グループの塩浴軟窒化処理は、最近ではめっき処理の置き換えとしても注目されている。また同社が得意とする「DLCコーティング」技術は、エンジン部品などにダイヤモンドの硬度に近いカーボン膜をコーティングするというものだ。この結果、内燃機関内の低フリクションが実現、エネルギー燃焼効率は格段に上昇する。

　従来の表面処理サービスに加え、今後は「スーパーボール」の世界同時発売で、タイやベトナム、インドネシアといった巨大市場での浸透も図る。

 

 

TECHNIQUES SURFACES (THAILAND) LTD. (HEF GROUP)

700/15 Moo 6, Amata City Chonburi Industrial Estate, T. Nong Mai Daeng, A. Muang Chonburi, Chonburi 20000, Thailand

TEL +66 (0)38-213-818　 FAX +66 (0)38-213-789　 https://www.hefthai.com/

阿部 文俊 (JP/EN): fabe@hef.group　 +66 (0)80-252-2898

Chirapan Wongsamart (TH): wchirapan@hef.group　 +66 (0)83-835-0845